「無能の弁護士」


散歩につれてく前に
くさりにつなげそこなっちゃったんだ
それで
有頂天の飼い犬ジョンが
とびだしていっちゃったんだ
玄関前のおきものが
静寂のうちにたおれて割れて
つまりそういうことだったんだ
父さんをおこらせたのは 父さんを
ゲキドさせてしまったのは

頭をはたかれたジョン
(まったくこれだから!)
ひとさしゆびさされて大声で
(散歩は三、四日抜きだ!)
座ったまま 前足うろうろさせてるジョン

黙っていた ボクは
父さんのひとさしゆびを見ていた
うつむきもしない ボクは
一生 誰の弁護も
しやしないんだろう
この先 一生

学校から帰ると
ジョンは じっと庭の木を見ていた

父さんは ジョンの散歩をするかかりが
ボクだと知っていたかなぁ?



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(C) 2001 脇素子 (WAKI Motoko)