ぼちぼち


散歩のしすぎで
ばったり行き倒れ
それきり動かない
それで
わたしを見下ろす わたし が
いるのだった

福岡の とある公園の 散歩道
大きな木の下 芝生の上に
うつぶせで倒れたっきり
動かないわたしに
ゆらゆら影を落とす 木の枝が
ざわざわざわ
大きな風に 葉ずれの音させ
話しかけて くる
「やあ、わきさん、調子は、どうです?」
わたしを見下ろす わたしがこたえる
「ぼちぼちです。」

風だけ吹いてる公園で
立ったままのわたしが
うつぶせで眠ったっきりのわたしを見下ろして
涙ぐむ
(どうせ死ぬならさ、上を向いて、倒れたらさ、良かったのにね)

ざわざわざわざわ
木が揺れて
「お元気ですか?」
涙ぐんだ わたしが顔をあげてこたえる
「うん。ぼちぼち、元気、です。」

そこに すいーっと
トンボがあらわれ 宙でとまる
「やあ、わきさん、元気、だしなよ。」
「うん。」
右手のすそで 両眼をぬぐって
わたしがこたえる
「うん。元気、だすよ。」
再び すそで 眼をぬぐう
「スキップで、ゆくよ。ぼちぼち、ね。」



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(C) 2001 脇素子 (WAKI Motoko)