電話で


ねー さっきっからさー
だからなにってことなんだけど
ねー だから なに?
言わなきゃわかんないったら
わかんないんだから さー!
受話器握って待ってるみたいに 沈黙
したって しらないよ
以心伝心 なーんて 夢見てないよね 夢見ないでね
脳味噌 違うんだからさ 出来違うんだから
あたし ばかなんだから ちょっと利口なんだから
あなたとあたしは 違うんだからね
あ、と言ったら、うん、ってお茶
入れるんだーっなーんつって
昔の人って ホントにホント ロマンチスト
あたしから見りゃ 大甘だよね
甘えんじゃあないーって感じよ ねー
たら ねー だからなによ?
言わないと わかんないんだったら ねー

…………

ああ、肩が こってんのね。
パソコン画面、ちらつくんだ。
ああ、ミヤケくん 嫌み言うの。
仕事はかどんなくって 疲ればっかりたまるんだ。
それにひきかえ それにひきかえ? なによ?
ああ、タジマさん タジマ先輩 ねたましいんだ。
でも? でもでも、なによ?
ああ、ヨシダ課長 期待して くれてるんだね くれるんだね。
へえ、そう。期待がちょっと、重いんだね。
えーと、つまり? ああ、そうか。
肩がこって いるんだね。

…………

あー ね わかったよ わかったからさ
肩揉んで あげるからね
次 会ったとき
肩揉んであげるよ
いいってことよ だってひまだし
ちょっとだけね うん ちょっとだけ
だよ あったりまえじゃん
そんなに長くは やんないよー
だって疲れるし
あたし 体力無いんだもん
握力なんて ないのと一緒 くらいだもん
肩揉んでても
すぐに疲れちゃってさ
あたしの両手が疲れちゃったら
肩もみタイム はい、おひらきーって すぐやめるよ
肩もみする手を うっちゃって さ
うっちゃって
もたれかかって 手を休めて
腕をまわして 背中に胸ぎゅーって 押しつけて
あたしの心臓
動いているのを
聞かせたげるね



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(C) 2001 脇素子 (WAKI Motoko)