公園


君が台所で
ひとりでホットミルク 飲んでるから
仕方なく
娘を連れて 散歩に出る
オトーサン どこ行くの ねぇ どこ行くの
公園
重いドアを閉じると
俺達はたぶん二人して 少し息が吸える
どういったすれ違いで
胸を張り裂けるようにして
君 ホットミルクを飲んでいたのか
そのはじまりを 思い出せるかい?
俺のほうはもう 思い出せない
ねぇ オトーサン 公園行くの? 公園行くの?
そうだよ
靴ひきずって 前を向いて歩く
娘の小さな足が
俺を追いかける 音がしている
会釈して通り過ぎた自転車のかごには
スーパーの袋
今の 君の知り合いかな
公園には 一匹の犬もいず
木とブランコと小さな砂場
オトーサン ブランコ あたし 乗る
うん
君を
台所で泣かせた
胸をはりさけるようにして
必死に内圧おさえて
ホットミルク
飲んで
そんなふうに
ひとり台所で
オトーサン ねぇ
ねぇ オトーサン 手ェ 繋いでェ
ブランコの外の柵に
腰掛けて空を見てた
娘はブランコから降りて
目の前に来てた
小さな両手を
俺に差し出して
オトーサン 手ェ ねぇ
俺を見上げて
両手 差し出して

風がふいて ざわざわと木が揺れて
涙が こぼれそうだった



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(C) 2002 脇素子 (WAKI Motoko)